この所、Salyuのライブの時は、ここに掲載している様に、カメラでSalyuの表情を撮り続けている。会場になっているStar
pin's Cafeでのライブは、Salyuの場合、"今の所"フラッシュを使用しなければ、写真撮影が可能だからである(いつ写真撮影禁止になるかわからないので、それ迄の間である)。薄暗いライブステージで、彼女の表情を追い掛ける為に、ISO1600という高感度フィルムと、レンジファインダー並みに明るい空中像方式という特殊なファインダーを持つ一眼レフを使用している(註:最初のColumnの写真はISO800フィルム)。
ファインダーの中というのは、ある種特種な世界である。裸眼で見る現実ではない、しかし、ビデオ等で見る様な「虚像」の世界でも無い・・・。光によって結像された実像・・・。
ファインダーの中でSalyuが唄う。Salyuが囁く・・・。
せっかくの生ライブをファインダー越しに見るなんて・・・と思う人もいるだろう。勿論常にファインダーを覗いている訳では無いので、生で表情を見ない訳ではない。しかし、カメラというものを始めてから、ファインダー越しの世界は現実では無いという感覚は無くなった。確かに生ではないが、自分の視線の延長に過ぎない。一瞬の表情を捕らえようとするから、かえってSalyuの表情が良く判る。
そんなファインダー越しに捕らえる彼女の唄う表情は、身体の内から何かを絞り出す様に見える。絶唱する様な唄い方の時も、囁くような唄い方の時も、彼女は身体の中から、彼女が「内側のもの」と呼ぶものを外界へ放とうとしている。今迄のこのページで書いて来た、目を閉じて唄うスタイルも、何かを伝えようとするかの様な手の表情も、総べてはこの行為につながる・・・。
四角く切り取られたファインダーの中の世界で、それは顕著になる。その世界にはSalyuの顔や、手の表情しか無く、周囲の状況から隔離された視野になる為だろう。
今回のSalyuは初めてアンコールがかかり、"あの"「Ave,verum Corpus」という賛美歌を唄った。まるで「天使の梯子」そのものの様なライティングの中で、天上からの声の様に唄うSalyu・・・。それは現実世界からしばし逃避させてくれる様な瞬間だったが、僕は、ファインダーを覗いていなかった・・・。フィルムがもう無くなっていたのだ。フィルムが無くなっていても、一度はファインダーを覗いてみるべきだったと・・・今は少し後悔してといる。
そこにはきっと、裸眼で捕らえるのとは違う表情を見せるSalyuが居たに違いないのだから・・・。 |