お気付きだろうか。
Salyuは唄う時、多くの場合、両手でマイクを握る。「唄う」という行為を慈しむように・・・。まるで祈るように・・・叉、時として「歌」にこもったエネルギーを手に込めるように・・・。
Salyuの手の表情は、彼女自身の感情を垣間見る事の出来るささやかな場所なのかもしれない。
その手の握り方、指の動き、時には強く、時には弱く・・・。踊るように・・・。
ステージライトに照らされた彼女の腕の産毛の柔らかな輝きと共に、彼女の指先の小さな動きが強く印象に残っている。
そしてSalyuは目を閉じて唄う事も多い。彼女は一体自らの瞼の裏に何を見つめているのだろうか。
唄いながら彼女が思い描く世界とはどんな世界なのだろうか・・・。
「そもそも生きているというのは悲しい事件でしょ?人間にとって最大の心の傷は、存在」というのは小説「リリイ・シュシュのすべて」に登場するリリイ・シュシュの言葉で、Salyu本人の言葉ではないが、それはドン・キホーテの「一番重い罪が何だか知ってるかい?生まれて来たことさ。そのために生涯罰を受けるんだよ。」という言葉を想起させる。夢の世界で、より人間味を持って生きるドン・キホーテ・・・。一見冷めた世界観を持つように見え・・・しかし、生きる事に臆病で、それ故に生への遠さに悶え続けるリリイ・シュシュを演じて来たSalyuは、そこに何を観ているのか・・・。
Salyuが唄いながら見る夢は、歌詞や音符に潜む悲しさや、切なさか・・・。
彼女は雑誌のインタビューにこう応えている。
「だから、唄うことは内側のものなんです。自分の中にあって、それを探していくということなんだと思います。」
彼女が内側で見つめるもの・・・彼女の手はそれをほんの少しだけ外の世界へ見せてくれているのかも知れない。
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